2011年11月15日火曜日

46日目

昨晩はかなり冷えた模様で雹が降りました。だんだん冬になって来た感じがします。

さて、今回のカナダ滞在における研究について少し詳しく。

この辺りで生産されているホタテガイは1980年代に日本から移植したものですが、1990年代にこの養殖ホタテガイに疾病が大流行し、大きな被害が出ました。
病原体ですが、日本からホタテガイを移入する際には検出されておらず、この辺りの貝類にいた寄生生物が、新たに入って来たホタテガイに対して病原性を示すようになったと考えられています。
ホタテガイは日本でも重要な水産資源であり、この病原体が持ち込まれれば甚大な被害が想定されます。そこで、本来の宿主を明らかにすれば病原体持ち込み阻止につながると考え、今回の滞在になりました。

しかし、この計画には一つ大きな問題がありました。
1990年代半ばを最後にしてこの病気が一切報告されなくなっていたことです。
疾病発生によって耐病性品種だけが生き残った、もしくは地元のホタテガイ近縁種との交雑で耐病性を獲得した、と考える研究者もいたようですが、いずれにしろ研究材料が手に入らず、この病原体の研究は完全に停止していました。
従って、本当にカナダに来ても研究計画が実行できるかどうか、一抹の不安はありました。

今回の滞在中に行ったサンプリングで、病原体と疾病が未だにあることを証明することができました。さらに、病原体が手に入ることで、遺伝子的手法を用いた診断法の開発や生物学的知見を得ることができ、止まっていた病原体研究再開の目処がたちました。
結果が出るかどうかは分かりませんが、何とか当初の研究計画も遂行できそうです。

一つこちらに来て感銘を受けたのは、サンプリングに協力してくれた養殖会社に病原体再検出の報告をした時、感謝の言葉と新しい知見があったら教えてください、と言われたことでした。他には口外しないでくれ、という言葉を予想していたのですが、科学的知見を受入れ対策を練って行こうという態度は、水産業に携わる者には何よりもの励ましとなりました。

残り二週間の滞在で、日本の水産業にとっても有益な知見を得て帰国したいものです。

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